南極ことはじめ
 南極観測事業が開始される前年の1956年初頭、西堀栄三郎さんから札幌の加納一郎さんに犬ソリを南極観測隊で使いたいという話が持ち込まれた。これを受けて北大山岳部の学生達によって「北海道大学極地研究グループ」を結成され、カラフト犬を対象に犬ソリの訓練が行われた。南極へ連れて行くまでの訓練の状況を話す。(13:05〜13:25)
安藤久男  第10次日本南極観測隊 内陸旅行隊長


南極観測の50年
 わが国の南極観測は1956年11月8日に「宗谷」が第1次観測隊を乗せ、晴海を出港して以来、今年11月で50年目を迎える。今年は48次隊を送り出す。この間、わが国の南極観測は地球科学、惑星科学、生物科学分野で大きな成果を上げてきた。日本の観測基地は「昭和基地」の他に南極大陸最高地点の1つである「ド−ムふじ基地」を含む四基地を擁し、南極大陸の気候系に対応する本格的な観測網を展開している。南極観測船の変遷を軸に、南極観測の発展の歴史を述べると共に、南極氷床内陸部の探検の道筋を語る。
渡辺興亜 元国立極地研究所長


零下七十度を生きる
 南極ドーム基地は日本のベースステーションである昭和基地から1000km内陸に位置し,標高4000m,気圧600ヘクトパスカル、年平均気温−60度という地球上で最も厳しい環境にある。私はこの地を三重苦のドームと呼んでいました.半年は零下七十度台という超低温、酸素分圧が地上の60%という低酸素、そして雪が全く解けないための異常乾燥です。この苦しみを乗り越え南極大陸のてっぺんを生きた男達の話である。
米山重人  国立病院機構西札幌病院外科医長
  (第32次・38次日本南極観測隊 ドーム基地越冬隊員)


氷床深層コアによる地球環境の復元
 氷床コアは地球環境のタイムカプセルである。過去の気温、温室効果ガス濃度や、砂漠、海洋、生物、火山など地球環境の状態を示す情報が、さまざまな物質として氷の中に保存されている。わが国の研究者は、これまで40年近くにわたり、南極氷床の掘削とコアの研究を続けてきた。こうした歴史を振り返るとともに、南極ドームふじ深層コアから明らかとなった過去数十万年スケールの地球環境を紹介し、地球環境の将来を考える。
藤井理行 国立極地研究所所長